2006年10月22日

埋みの棘(A)


埋みの棘
著者名:佐伯泰英(著)
出版社:角川春樹事務所
出版年:2006.09
ISBN :4758432538



鎌倉河岸捕物控シリーズ第十弾。
金座裏の政次が活躍する人気シリーズ。金座裏の若親分として、着実に力をつけてきている政次。今回の物語は、政次、亮吉、彦四郎が抱える過去の事件を巡るお話。

金座裏の若親分、政次は、ある日奉行所の内与力に呼び出しを受け水戸藩老中との関わりを問われる。不思議に思った政次は、11年も前に起こった事件を思い出す。その帰り道、刺客に襲われる政次と亮吉。政次たちは、望まないなか、水戸藩のお家騒動に巻き込まれていく。

今回は、鎌倉河岸捕物控の10作品目刊行と読本刊行記念として、二冊買うと、特製「金流しの十手」携帯ストラップが1000名にあたるとのこと。基本的には読本は買わないことにしてるのだが、特製ストラップは欲しいなぁ・・・。どうしようか、読本・・・。
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黒く塗れ(A)


黒く塗れ
著者名:宇江佐真理(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2006.09
ISBN :4167640066



髪結い伊三次シリーズの第五弾。宇江佐真理氏も好きな作家。髪結い伊三次は、八丁堀の役人の小物としても働いているが、十手持ちではない。髪結いとして、主に働き、必要な時に捕り物の手伝いをしている。

このシリーズは基本的な内容は捕物帳であるが、今回の後書きに、著者はこう記している。「伊三次のシリーズは一応、捕物帳ということになっているが、私自身には捕物帳を書いているという意識はない・・・サブタイトルの『捕物余話』に注目していただきたい。あくまでも余話なのだ。つまり私は捕り物を書いているのではありませんよ、というメッセージを送っているつもりなのである。」と。つまり、このシリーズは捕り物がメインのものではない。あくまでも捕り物は「余話」なのである。しかし、この「余話」がまた、なんとも良い味を出している。

今回のタイトルは「黒く塗れ」である。詳しいことを書いてしまうとネタバレになるので、書かないが、新しいトリックにチャレンジしているとはいえ、どこで、犯人はこのことを学んだのかなど、細部に疑問が残る部分もある。

しかし、どの短編も引き込まれていき、あっという間に読んでしまった。今後が期待されるシリーズ。
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江戸からの恋飛脚(A)


江戸からの恋飛脚
著者名:佐藤雅美(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2006.08
ISBN :4167627124



八州廻り桑山十兵衛シリーズの第4弾。
短編が8編収められている。それらの短編を通じている話しが、十兵衛の恋の行方。もうひとつ、最後になって、明かされるお話があるのだが、読んでのお楽しみということで。

佐藤雅美氏もお気に入りの作家のひとり。特にお気に入りがこのシリーズ。それ以外にも、「織尻鏡三郎」や「槍持ち佐五平の首」などもお勧め。

「八州廻り」とは、関八州(上野国、下野国、常陸国、安房国、上総国、下総国、相模国、武蔵国)を廻り、罪人などを取り締まる役人のこと。その役人のひとり、桑山十兵衛の活躍が描かれている。

今回は、特に、一目惚れした登勢との恋の行方が注目。二つの伏線が物語を通じて記されてはいるものの、それぞれが独立した短編として読め、また、次の物語、次の物語と期待をもって、読み進めることができる。さすがと思わされる作品。

お勧めの作家、お勧めのシリーズです。
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2006年10月13日

美しい国へ(A-)


美しい国へ
著者名:安倍晋三(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2006.07
ISBN :4166605240



基本的に話題書は読まないように(あまのじゃくのためか・・・)している。けれども、ある人に勧められて、この本を購入。

全体的に、タカ派的な臭い漂う書物。そして、本当に著者自身が書いたのかなぁ?と思わせる内容。読み物としての評価がA-というのではなく、著者の思想を知る上での評価がA-。本の内容としては、「C」ぐらいか。

以下に気になったことを記してみる。

25頁「たしかに、軍部の独裁は事実であり、・・・マスコミを含め民意の多くは軍部を支持していたのではないか。」
戦争責任についての記述だが、著者は「当時の状況」を知っているのだろうか?特にも、戦争反対を訴えることが困難な状況の中にあって、正確な情報をマスコミが伝えることは出来なかった。確かに当時の新聞等を見てみると、戦争支持となっているが、それは、戦争を支持せざるを得ない状況下の中での軍部支持に過ぎないはず。特高警察などの思想的な統制もあったなかで、軍部不支持の報道が出来たはずない。

40頁「わたしが政治家を志したのは、ほかでもない、わたしがこうありたいと願う国をつくるためにこの道を選んだ。」
国民主権の日本において、独裁者のような言葉。政治家を選ぶのは国民である。国民がこうありたいと願う国をつくるのが、代議士たる政治家の使命ではないだろうか。「わたしがこうありたい」という言葉に危うさを感じる。

108頁「たしかに自分の命は大切なものである。しかし、時にはそれをなげうっても守るべき価値が存在するのだ、ということを考えたことがあるだろうか」
戦争で命を失ったもの(特に特攻部隊の隊員のこと)について記されているあとの言葉。自らの命をかけて守らなければならないという教育をしていったのはだれか。。戦争をせざるを得ない状況を作ったのは誰か。特攻という手段でしか戦争できなかったのはどうしてか。著者の歴史観に疑問を感じる。

128頁「日本では安全保障について考えることは、すなわち軍国主義であり、国家はいかにあるべきかを考えることは、国家主義だと否定的にとらえたのである。」
日本が軍隊を持つことに言及している箇所。西ドイツを例に挙げて、軍隊を持つことについて述べている。日本では、戦争責任の問題について、まだまだ明瞭でない状況にある。また、第二次大戦についても、侵略戦争だったというコンセンサスも得られていない。それに対して、ドイツは、いまもなお、自分たちの行った大量虐殺についての反省を行っている。自らの戦争を見つめ直していない中で、日本が軍隊をもつということは、近隣諸国から見れば、「軍国主義」と見られても仕方のないこと。ドイツと比べるのは疑問である。

135頁全般。イラクに自衛隊を派遣したことについて述べられている。アメリカにおいてもイラク戦争はでっち上げだったという理解をしている。日本もイラク派遣を行ったとき、大量破壊兵器の問題等も出ていたが、それについては記載なし。不十分な記述である。

138頁「自衛隊が独自に戦線を拡大していくようなことがあっただろうか」
PKO法のことについて。憲法九条がある日本にあって、戦線を拡大しないのは当たり前のこと。

自信と誇りのもてる日本へ。???著者はいまの日本では自信と誇りをもてていないのだろうか。

まだまだ気になるところはたくさんある。ぜひ、批判的な目でこの本を読んでもらいたい。そうすると、行間にあるたくさんの「危うさ」に気づくことができる。

美しい国。日本。いままのままでも十分美しい。この美しい国をこれ以上破壊しないで欲しいと切に祈りたい。
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2006年10月09日

神になった人びと(B+)


神になった人びと
著者名:小松和彦(著)
出版社:光文社
出版年:2006.07
ISBN :4334784321



小泉前首相が終戦記念日に靖国参拝する前に、タイトルに惹かれて購入した本。

副題は「日本人にとって『靖国の神』とは何か」というもの。神に祀るという行為がどのようなものであるのかを1章から4章まで、それぞれに該当する神社を例にあげて解説する。

第1章 利用すればなにかいいことがある。
第2章 ひょっとしたら祟るかもしれない
第3章 見えざる「力」を借りるために
第4章 いつまでも記憶しておくために

著者は、いづれの場合も、人びとが「記憶」しておくために、人を神として祀るという。

その中で印象深かったのは、第2章にて、「和霊神社」について記されていた、山家清兵衛を神としたのは、藩主の「後ろめたさ」があったからではないかと考察する。

この本を読み、「靖国」について考えると、靖国神社はどの章の神社に当てはまるだろうか。第1章〜第4章すべてに当てはまる気がする。
利用すればいいことがある。後ろめたさの故に、ひょっとしたら祟るかもしれない。見えざる「力」を借りたい。そして、いつまでも記憶しておく。

著者は、あとがきで、次のように語る。「日本人にとって『たましい』とは、亡くなった人についての『記憶』である。」そして、現代では、人を神として神社に祀るというよりかは、別の「記憶装置」があるのではないだろうかと問題提起する。

人を神として祀る。なぜ、そのような行為が起こるのかを具体例を示して教えてくれる一冊。靖国問題について語るとき、別な見方に気づかせてくれる。

人が神となる、人を神とする。誰が利用するか、誰がそれを行うかが大きな問題ではなかろうか。
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2006年10月08日

陽炎の剣(B+)


陽炎の剣
著者名:鈴木英治(著)
出版社:角川春樹事務所
出版年:2005.12
ISBN :4758432090



勘兵衛シリーズの第6弾。

近所でも評判の町医者、法徳が何者かによって殺害された。
町奉行所同心の七十郎が聞き込みを始める。

時を同じくして、徒目付の勘兵衛は、修馬とともに行方不明になった旗本の三男坊の探索を始める。三男坊の足取りをたどり、とある料理屋にたどりつくが、それ以上の手がかりは何も見つからない。

手詰まりを感じていた頃、とある旗本の娘が姿を消す。姿を消したのは、三男坊と同じ頃。なぜ、姿を消したのか。二人は駆け落ちをしたのか・・・。

しかし、事件は意外な展開へ。

お美枝の探索の行方も気になるところ。そして、事件が解決したが、勘兵衛をねらう視線が・・・。

一冊一冊と物語が終わるが、それぞれの物語をつなぐ、重要なストーリーが織り込まれており、次巻に期待をもたすあたりは、さすがである。

ミステリーとしても読み応えがあり、今後がさらに期待されるシリーズ。
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2006年10月03日

安政五年の大脱走(A)


安政五年の大脱走
著者名:五十嵐貴久(著)
出版社:幻冬舎
出版年:2005.04
ISBN :4344406362



ちかくの本屋さんおすすめの本の一冊がこれ。
世界文庫遺産なるフェアの一冊。

はじめての作家だったが、面白そうだったので購入。
しばらく、本棚に眠っていたが、ようやく手に取って読むことにした。

大老である井伊直弼が、若かりし頃に一目惚れした姫君とうり二つの南津和野藩主の娘、美雪姫。権力を傘に側室に迎え入れようとするが、断られてしまう。

どうしても、姫君を手に入れたかった井伊直弼は、懐刀である長野主膳に相談し、津和野藩士たちを謀反のかどで捕らえてしまう。

津和野藩士51人と美雪姫は、断崖絶壁の脱出不可能な山に幽閉されることになってしまう。この幽閉期間中に、姫の「心」を変化させ、側室に入らなければ、藩士たちの命は奪われてしまう。与えられた期間は一ヶ月。

どこにも逃げることのできない中で、穴を掘り逃げることを決めるが・・・

良く構成された内容で、読み応えのある一冊。特に、時代小説と脱走ものを融合させたあたりは、脱帽もの。

最後まで息をつかせぬテンポの良さ、そして、読了後の爽やかさは、娯楽小説にふさわしい。最近読んだ中では秀逸のでき。お勧めです。
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2006年10月02日

梅雨ノ蝶(A)


梅雨ノ蝶
著者名:佐伯泰英(著)
出版社:双葉社
出版年:2006.09
ISBN :4575662542



居眠り磐音シリーズ第19弾。

佐々木道場の改築完成を間近かに控えたある日、道場改築完成記念として剣術大会を催すことに。道場に集うものたちは、その準備にあたっていた。磐音もその一人。世話人の一人として、剣術大会への諸準備に追われていた。

そのような時、南町奉行所定廻り同心木下一郎太から、五人組の盗賊が島抜けをしたとの知らせを磐音は受ける。
江戸で大きな仕事をしてから逃げ出す算段をしていると。今津屋でも十分注意するようにという。

時を同じくして、磐音が不覚にも刺客に襲われ怪我を負う。

剣術大会の参加者は40人。磐音もその一人だったが、怪我のため辞退するがしかし・・・

今回を契機に物語は大きな転換点を迎える。
磐音とおこんの行方、佐々木道場の行方、今津屋の行方。

ますます目が離せなくなった磐音シリーズ。でも、そろそろ、シリーズ完結の予感も・・・。
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